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児童手当の所得制限を夫婦合算で考えることになぜ反対なのか?

今回は、児童手当の支給について考えたいと思います。

児童手当の支給要件については、所得制限が設けられていますが、現在の制度では所得が高い方の金額を基準にされているものを、夫婦合算での所得金額を基準にして児童手当の要否を考えるように制度を見直す方針が検討されてきました(待機児童対策の財源を確保するためだそうです)。

これに対して、私が拝見した世論の反応は下記のようなものでした。

www.businessinsider.jp

母親の8割が反対しているようですが(どういった立場の母親であるか不透明な部分もあるかと思いますが)、『世帯合算になったら仕事を辞める』などの強い反対意見があったらしいです(夫婦合算になると、なぜ仕事を辞めるのでしょうか?)。

 

結果的に、世論としては否定的な声が多く、政治的判断としても世論に沿った形で今回は見送りとなりました(そして世帯主の年収1,200万円以上となった場合は支給廃止が閣議決定され2022年10月支給分から運用される見通しです)。

 

ただ、個人的には違和感を覚えました。私個人の意見としては、家族として、夫婦ともに子育てしているのだから、夫婦合算した所得で児童手当の要否を考えるのは自然なことに思えるからです。

 

この問題に対する世論の反応としては、現在は共働き世帯の割合の方が多いわけですから大多数が世帯合算を反対するのは当然といえば当然です。

 

ただですね、ご自身の世帯が児童手当をもらえなくなるから夫婦合算に反対するということではなくて、『児童手当の本質を踏まえたときに、果たして片方の親の年収で考えることが本当に適切なのか?』ということをあらためて考えてみたいと思います。

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フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

 

児童手当とは何のためにあるのか?どのような世帯に求められるのか?

児童手当法という法律があります。この法律は、昭和46年に作られたもので、実は児童手当という制度は昭和47年に創設された古い制度になります。

 

児童手当法には、児童手当の目的、支給要件などの必要な事項が規定されています。

もっとも大切なのは、何といっても児童手当の目的です。児童手当を貰えるか、貰えないか、それだけを気にするのではなく、児童手当法の目的を正しく認識するうえで、児童手当法第1条は非常に重要です。この法律の根幹となる部分であり、要約すると下記のようになります。

 

『児童手当は、家庭における生活の安定を助け、お子さんの健やかな成長に役立てるのが目的です。』ということが書かれています。

 

児童手当の制度を時代に合わせる必要性

さて、ここからが本題です。

おそらく児童手当を貰っている方の多くが昭和40年〜平成初期の年代かと思いますが、一昔前に比べて、現代では子育ても含め、家庭生活は夫婦が協力して行うスタイルに変わってきました。

 

実は、児童手当が始まった昭和47年当時は、共働き夫婦は圧倒的に少なかったわけです。

『男は仕事、女は家庭』が当たり前の時代であり、そのような背景から夫婦で働いている場合は、所得が多い方の金額で算定することでほとんど解決されたと思われます。

 

ところが、現在は、夫婦共働き、家事や子育てもお互いが協力しながら生活する家庭環境が最も多いのです。

つまり、夫婦の協力を前提に生活を送っているわけです。

 

であれば、児童手当の趣旨に照らし合わせれば、夫婦の所得を合算した金額を児童手当の支給基準に設定するのは妥当ではないでしょうか?

 

2つのケースを比較してみましょう

実際に2つのご家庭のモデルを例に児童手当のシミュレーションをしてみましょう。ケース①は夫が稼ぎ柱で、妻がパート又は専業主婦といった状況です。ケース②は夫婦ともにフルタイムで就労しているケースを想定しています。

ケース①

夫の所得:900万円

妻の所得:100万円

 

ケース②

夫の所得:600万円

妻の所得:600万円

 

この時、生活の安定や子育てにおいて、お金を必要としているのはどちらの世帯でしょうか?

明らかにケース①の世帯ですよね。

しかし、実際にはケース①では子どもが4人いても児童手当はもらえません

一方で、ケース②では子どもが1人でも児童手当がもらえます

普通に考えて違和感を感じますよね?昭和40年代の制度はもうガタがきていることの証明かと思います。

私が主張したいのは、共働き世帯の割合が高いことは分かりますが、専業主婦(夫)であったり、パートであったり、就労形態・家族形態は多様化しているわけで、これまでのように一方の親だけでの所得金額で児童手当の支給を判断するのは、児童手当の本来の目的を見失うことにならないか?ということです。正規雇用の問題を混在する方も見受けられますが、児童手当の趣旨に照らし合わせれば、そこはセットで考える必要はありません。

また『共働きでも税金をたくさん支払っており、生活は楽ではないので、児童手当は大切なお金である』という意見もあるかと思います。

これについては、ケース①でも同じことです。むしろ、所得税は所得によって税率が上がります。つまり、生活が苦しいことを理由に世帯合算を反対するのでなく、児童手当の算定基準を世帯合算にしたうえで、所得上限を上げるような主張をすれば、子育て世代全体の視野での意見になるのではないでしょうか。

ちなみに、よくある勘違いですが、年収と所得は異なります。年収1,000万円だと、所得は800万円程度になるかと思います。

さて、さきほどの2つのケースを比較したときに、ケース①の場合はなぜ児童手当が貰えなくなるのでしょうか?これを合理的に説明できる方がいらっしゃるのであれば、コメントをいただけると嬉しいです。

 

重要なのは夫婦合算したうえで所得制限の上限額の適正な設定では?

そろそろまとめになりますが、仕事、家事、子育てなど生活に必要なことは、夫婦が協力している時代です。夫婦合算の所得で児童手当の支給を判断するのが妥当ではないでしょうか?

別に、世帯合算することに反対している方を批判しているわけではなく、単純に世帯合算されたら児童手当が貰えなくなるから反対しているという方がいるならば、それではモノゴトが前進しないと言いたいわけです。

合理的な主張があるのであれば、ぜひご意見をいただければと思います。

本当に生活が苦しいのであれば、世帯合算に反対するのではなくて、世帯合算したうえで所得制限の上限額の引き上げを主張すべきでないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。